Talks vol.4
andro Japan会長・山崎譲治さんとアスリート向け卓球専用靴下の開発
ドイツの卓球総合メーカー「アンドロ」の日本代理店andro Japan会長・山崎譲治さん。自身も日本のトップレベルで卓球選手として活躍された経験を持ち、現在、着用検証段階に至る「アスリート向け卓球専用靴下」の開発への想いをはじめ、これからのビジョンについて、RENFRO JAPAN代表・高橋良太が対談を行いました。
卓球へのこだわり×30年の靴下ノウハウ
高橋 : 先ほどはコーチや選手の皆さんによる「アスリート向け卓球専用靴下」の着用検証をありがとうございました。そして、幼少期以来の卓球でしたが、とても楽しかったです。
山崎さん : 自分も選手の時からこだわりが強いほうだったんですが、アンドロには、こだわりをもって商品を作って、“卓球界を変えていきたい、卓球に貢献して盛り上げていこう”という社風があります。ドイツ本社の社長が代表選手として6回世界大会に出たり、プロとして何回も優勝していたり、他の部署にもオリンピック出場者やプロの方が何人もいます。
高橋 : アンドロはドイツの卓球総合メーカーですが、改めて事業内容を教えていただけますか。
山崎さん : アンドロジャパンは、「アンドロ」の日本代理店として、ラバー、ラケットはもちろん、ウェア、卓球台、全ての卓球用品を取り扱っています。アンドロ本社とも協力し、オリンピック代表選手、プロチーム、実業団、ジュニアをサポートしながら、卓球の発展に貢献させていただいています。
高橋 : 山崎さんは選手として、アンドロにサポートしていただいていたんですか。
山崎さん : いえ、サポートはなかったんです。私が現役の時はマーケットに認知されるほどの規模がなく、日本代理店として伸ばしていくフェーズのなかで、引退後にご縁があって今に至ります。
高橋 : ずっと卓球なんですね、僕はずっと靴下です、もう30年。総合商社時も靴下の担当で、洋服が好きなので、なんで靴下と思ったんですがハマっちゃったんです。流通さんやメーカーさんから細かい指摘を受けますが、足だから機能が伝わりやすいんですよね。それってアウターではなかなか体験できなくて、面白くてどっぷりハマって。そんな中、アメリカで100年以上の歴史があるレンフロから、日本でローンチしたいということでお声がけいただいたんです。
山崎さん : 30年ずっと靴下ですか。
高橋 : はい。今回の技術開発担当は40年、営業担当も30年、靴下一筋ですね。
「アスリート向け卓球専用靴下」開発への想い
山崎さん : 靴下について、いろいろな会社さんとお話しさせていただいたんですが、こだわった商品をどこまで作れるかというのが課題でした。厚さや締めつけ等の細かいこだわりにお応えいただき、実現できる会社とできない会社があるんですが、御社はその部分の開発力や技術力に強みをお持ちであると感じたので、アスリート向けの卓球専用靴下のご相談をさせていただきました。
高橋 : 昨年の6月ぐらいにオファーをいただきましたね。
山崎さん : そうですね。日本はメダル常連国となっていて、強化し始める年齢も早まっています。近年、ラバーやラケット等の進化が卓球選手の進化を後押ししているのに比べ、アパレルに関してパフォーマンスをアップさせるための開発は非常に難しくて、弊社の商品に対して課題やポテンシャルがあるのはわかっていたのに、ただ、それを何年もカタチにできなかったんです。でもアスリート向け卓球専用靴下を作るチャンスがないかと温めていて、その時に御社とご縁があって、その想いをぶつけたらカタチにしていただいて、着用検証段階まできています。
高橋 : レンフロはスポーツソックスが得意で自信はあったんですよね。ランニングですと持久系、卓球はイメージ的に瞬発系なのか、どういうニーズがあるのか興味がありました。いろいろなスポーツに貢献できる企業になれば商品開発力は間違いなく上がると思い、ぜひということでオファーを受けました。手のひらぐらいのアパレル商品ですが、ここに僕ら何十年という経験を注ぎ込んで、着用検証でもコーチや選手の声を活かして、さらに進化できるし、そういうのがやりがいですよね。
山崎さん : ランニングだと、どれぐらい薄くするかということもあると思うんですが、卓球はだいたい分厚くて、厚さをもっともっと、通気性をもっとって言われると、その反比例することをどう実現できるのかというのが難しい。素材や編み機も関係しますし、会社によっては実現不可能なこともあり、今回、御社でこうやってカタチになって非常に嬉しく思っています。
自分が思った通りの動きを邪魔しない“足との一体感”
高橋 : 検証ではスニーカーフィット®を採用し、サポート位置の異なる2種類のサンプルをはいていただきました。改めて、スポーツの動きによって靴下が果たす役割はとても重要だと感じました。山崎さんから最初にお伺いしたご要望は“厚い、クッション性、適度な締めつけ感”でした。例えばランニングですと、土踏まずから甲を締めつけ、プラス足首をもっと締めたいとか、ふくらはぎをもっと締めたいという方もいます。それは血流を促すほかに、疲労が蓄積しないために筋肉の揺れを防ぎたいということでした。山崎さんがおっしゃっていたのは締めつけが程良いんですよね。スポーツでもこんなに違うのかと、だから、こだわりポイントは突き詰めていくと、はく方によってそれぞれあるのではないかと思いました。
山崎さん : 卓球は1日に何試合も戦うので、締めつけが強すぎたら疲れるので、靴下をどれくらいはき続けるかということも影響してきますね。
高橋 : スポーツを徹底的にやられている行動に対して、靴下がお役に立てるチャンスというのはまだまだあるなと感じました。
山崎さん : 卓球で重要なのはテクニックに見えますが、強くなればなるほど「足」が重要になってきます。足が動いたうえに上半身がついてくるんです。その時にシューズのなかでソックスが動いてしまうと、ほんと0.0何秒の話ですが自分の思った通りの動きに影響してしまい、上半身にいく前にもう不利になってしまいます。だから靴下は重要な役割を持っています。
高橋 : うれしいね、靴下屋としては。もう担当スタッフはうれしすぎて泣いちゃうね。
山崎さん : アスリート向け卓球専用靴下は自分が想像している動きを邪魔しないといってもいいかもしれません。着用したコーチも言われていましたけれど、足と一体化していて地面をつかむように動けるのが理想の靴下やシューズになってくるんです。卓球はボールがほんとうに早いので、足が細かく動いているところに体重をのせて、前後左右、どこに力を入れるのかを微妙にコントロールしています。レベルが上がれば上がるほど、ラバーにこだわる人は当たり前ですが、靴下やシューズにこだわりの強い方がどんどん増えてきます。薄くて足に合わない靴下をはいていると、ケガや水ぶくれにつながりますから。
高橋 : 多いんですか、水ぶくれは。
山崎さん : 多いですね。水ぶくれに1回なってしまうと回復に時間がかかるじゃないですか。そうするといい練習ができない、試合までにいい調整ができない。試合の時に水ぶくれになってしまうと、次の試合に影響がでるという、負の連鎖が起こってしまいます。そういう時に水ぶくれを防ぐような靴下があれば、選手はそれをはきたいと思います。
高橋 : 今日、着用検証で感じたのは、サンプルのサポートの締めつけが気になる方と、気にならない方がいる。靴下って、重要なのが厚さもなんですけれど、やっぱりサイズって、とても重要だと思うんですよ。今日のサンプルは25~27cmの1サイズでお持ちしましたが、サイズ展開は数種類を考えていますので、次のフェーズでは今回のアップデート版を2サイズ用意してはいていただき、それでファイナライズすればいいものができると思います。
山崎さん : 今回はアスリート仕様なので、選手の満足度やフィット感が上がった方がパフォーマンスも上がりやすい気はしましたね。
高橋 : これはレディースも作りますよね。3サイズは絶対必要ですね。
山崎さん : ジュニアアスリートの応援もしていきたいと考えているので、5サイズ展開にしたらすごいと思うのですが、今は4サイズの展開を考えています。
高橋 : 検討の余地ありですね。
- ※「スニーカーフィット®」はレンフロ・ジャパン株式会社の登録商標です。 (特許取得第6643025号)
共感を紡ぎ続け、常にアップデートしていきたい
高橋 : ジュニアの応援ということで、今後のビジョンをお聞かせください。
山崎さん : 長期的なパートナーとして、継続的に研究開発をさせていただいて、日本を代表するアスリートのサポートに貢献できたらと思っています。パリのオリンピック・パラリンピックが2024年ということでもうすぐなんですよね。卓球の選考レースはもう始まっています。
高橋 : これからもっともっと試合がシリアスになっていくわけですよね。
山崎さん : 選考のポイントで、その選手が出場できる種目が増えるか減るかが決まって、出場できないとまた4年後になってしまうので、かなり重要な戦いになっていきます。
高橋 : いつの日か、開発した靴下をはいている選手がオリンピック選手になるかもしれないって思うと、すごくワクワクしますよね。
山崎さん : アンドロ全体でスポンサーしている選手は何名もオリンピックに出場していますし、今回開発している靴下も選手がはきたいということであれば、もうすぐに来年にでもはいている可能性はありますね。
高橋 : 僕らのビジョンにも関係するんですけれど、こういったご縁で靴下を作らせていただくうえで、ジュニアの子たちに、はきやすさや動きやすさを感じてもらえる一助を担えればと思いますし、「アンドロさんの靴下っていいよね」って言われるような物づくりができれば、両社のビジネスと関係がずっと続いていくと感じています。継続・持続していくって「共感」だと思うんです。お互い共感して、パートナーとして認め合わないと持続しないじゃないですか。両社の関係はスタートしたばかりですが、5年、10年、ジュニアたちが10年後、「あのおじちゃん、ありがとう」というような、それがほんとうのサスティナビリティだと思うので、ぜひ長く続けていきたいです。
山崎さん : ぜひぜひ、お願いします。
高橋 : 卓球と靴下で夢を語れる二人って、なかなかいないと思います。
山崎さん : こだわりがどこまで影響していくのかと考え、未来が見えると夢がありますよね。
高橋 : 今回の取り組みが継続して、ジュニアの子たちが、我々が作った靴下で世界に羽ばたいていくことを夢みながら、現状に満足せずにどんどん進化していきたいと思います。